欧州ウイーン行の1 Sturm

朝、息子がホテルに来て散歩に出かける。近くのドナウ運河とドナウ川の橋を歩いてウイーンの旧市街方向と反対方向のウイーンの森を遠望する。運河や河川に沿って割と広い自転車道が整備されていてひっきりなしにロードバイクや通勤の自転車、ランナーがスイスイ通っていく。見ると道の看板にEURO vero6とあって足下の道は大西洋から黒海までヨーロッパを貫く自転車道とわかって大いにロマンチックで感慨深い。

「EURO VEROはるけき道の中に立ち黒海近くの戦をおもう」

(ドナウ川

自転車道看板)

講義がある息子と別れ、二人でまずは旧市街へ向かう。ウイーンでもWienMobileという交通アプリを入れて出発する。最初にリンクという旧市街に入ると屋根が緑、壁が白い統一感のある、多分由緒あるに違いない建物に囲まれて右も左ももよくわからない。ぶらぶら歩いて早めの昼食はケバブ屋で取る。こちらにしてはまだ安いシュニツェルバーガーとコーラで7€。欧州のカフェではタバコを吸う人が割と多いがこの店にはいない。そこから赤と白のカラーのトラムに乗ってリンクの中心に向かうと市庁舎、マリアテレジアの像などが見えたので下車。目の前にあったモーツアルトの像がある公園内を横切って王宮に向かう。ハプスブルグ家の時代からの建物の間を観光用の馬車が行き交う。王宮前ま観光客で混雑、そこから伸びる道々には高級ブランドの店がまんべんなくあって更に人が多く、どの人もマスクなどは一切していない。人種も色々で民族衣装の人もいる。進むとやがてシンボルのシュテファン教会前に出る。奥さんは約5年前にもウイーン来ているので私よりは詳しく色々解説を聞く。

「それぞれの人種も顔も集まりてシュテファン教会気温は高し」
「リンク内旧市街を説明す君の言葉は優越少々」

モーツアルト像)

10月にしては日差しも強く石畳の暑い街中を歩き回り、15時過ぎに息子と合流する。夕食はホイリガという郷土料理にすることになり、一旦ハイリゲンシュタットへ戻る。そこからトラムで数駅でウイーンの森と呼ばれる標高にして2-300mの山々の麓まで行く。麓の町は少しハイソな感じの住宅街で石畳の道の両側は大きな家が続く。坂道を登っていくと道幅が狭くなり家並みが切れるところでぶどう畑が現れる。この辺がウイーンの森の麓の白ワインの産地らしい。息子の案内でぶどう畑のなかの土の農道を登っていく。木にはまだ小さな緑のぶどうの房があって、そのまま食用にはなりそうにない。田舎道を同じように歩く人がゾロゾロいてやがてぶどう畑の中で大きな歓声が聞こえてくる。発酵し始めでワインになる前のSTRUM(ストルム)を飲む酒盛りらしく、日本の花見みたいなものか。シュトルムを売る小屋があって周囲に折り畳み椅子に腰かけて大勢が談笑している。ウイーン市内が見える頂上に近いところに場所を取り息子がストルム購入。赤く暮れていく空とドナウ川にウイーン市内の灯りの明滅は夜が深くなるにつれ美しい。そこそこ冷えてきても半袖半ズボンの人もいて感覚がわからない。下戸の私は酔っては帰りが辛いので半分くらいでやめておく。帰り道、話しかけてくる夫婦がいて東京に5年ほど住んでいたとか、息子が会話する。やがて完全に陽が落ちて足元が暗いので用心して下りる。街に下った丁度そのあたりはベートーベンが住んでいたグリンツイング地区で、民家風のホイリゲレストランが多い場所だそうだ。古く重々しい木戸のある民家風の一軒のホイリゲに入る。屋内は盛況で満員、屋外のテーブルになる。ウイーン郷土料理はサラダと肉料理でまずまず美味しい。息子曰く「これがウイーン料理のすべてやで」。世界遺産の旧市街とは違ってがぶどう畑の丘登りとシュトルムは普通の観光とは違った味わいがあった。

「君と来しぶどう畑の坂道はウイーンの森の消えない記憶」

(ウイーン旧市街方向)

(STRUM)